Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

邸外に住むことにしたので、患者も少しは来ますし、往診もちょいちょいありました。近所の婆さんが、煮焚の世話をしてくれていたそうです。

私どもが著いた明くる朝、お父様がお出かけになるのをじっと見ていた私は、お母様の耳に口を寄せて、「あのおじさんが、何か持って行くよ」といいました。

「まあ、この子は。お父様ではありませんか。」

皆に笑われて、真赤になってお母様の蔭に隠れました。ゆうべはごたごたしていてよく分らず、一、二年の間にすっかり見忘れたのも道理です、お写真などもなかったのですから。袋戸棚から紙入を出して、懐にお入れになったのを私は見たのです。

今まで広いところで育ったのに、庭というほどのものもなく、往来に向いた竹格子の窓から、いつも外ばかり眺めていました。目に触れる何もかも珍しくて、飽きるということがありません。毎日通る人の顔も、いつか見覚えました。お邸の御家老の清水さんという人が、お家にお風呂はあるのでしょうに、毎日お湯屋へ行かれます。小雪の降る日にも湯上り浴衣で、傘をさしてお帰りです。お母様が一度御挨拶をなすったので知りました。著物は持っていられません。