Japanische Klassiker mit Furigana
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まど
鷹野つぎ――人と文学
鷹野 つぎ
Lesen Sie 鷹野つぎ――人と文学 (まど) von 鷹野 つぎ (たかのつぎ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.840 Zeichen · 43 Bildschirme
何かの歌謡曲を澄んだ丸味のある声で唱っていたりして、腹痛の柔らいでいる時には、何か思い出している様子も見せた。
「山野さん、私ね、まだ男のかたと一度も交際してみたことありませんでしたの。私の故郷の方ではお盆のころ山の方へ若いひとたちがあつまって、笛を吹いたり踊ったりすることになってましたけれど、私は一度も行きませんでしたの」
私はなんと答えようもなかった。とよ子も何処かで短かい生涯を予感してでもいるのであろうか、若い娘がこういう心の寂しさまで私に開いてみせてくれたことが、あまりにも私の心を打ち、と云って不吉な予感など持つ自分が忌まわしくあった。
「今にとよ子さんも達者になれば、いくらでもお友達はできますよ」
「そうでしょうか」
あどけない眼つきで、来る日を夢みる様子でもあった。
十五日ほど指折り数えていたあとで、待ちわびていた長兄の代りに、嫂がふいに病室の扉を引いてはいってきた。
野径を油断なく見詰めていたはずのとよ子も、瞬間ギョッとしたように嫂の近づく姿に眼を向けた。
色の小黒い、眼鼻立ちも見分けられぬほど固く凝り結んだ顔つきであった。人間がひとつの不快な思いを長い間積み重ねて、突然その思いの現われる場所にふりむいた顔つきがこれに似ていた。