Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まど

鷹野つぎ――人と文学

鷹野 つぎ

Lesen Sie 鷹野つぎ――人と文学 (まど) von 鷹野 つぎ (たかのつぎ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.840 Zeichen · 43 Bildschirme

Aozora Bunko

聖書を膝の上に置いているような暇な時に、附添婦が時折りたずねた。

「何かお読みいたしましょうか」

私はいつも南にばかり向けている重い頸筋を、附添婦の腰かけている反対側に向けた。

「ぼんやりしているのが、とてもたのしくてね」

「いろいろお悲しみにならないが、よろしうございます。亡くなった坊やのおためにも」

附添婦の小谷さんは部厚い聖書の頁を繰り展げた。

私は亡児の気分のよい時に、小谷さんに二三度聖書を読んでもらったことを思い出した。今でもありありと眼に浮ぶのは、そうして読む時の小谷さんの変り方であった。読みはじめるから忽ち声がよろこびを帯びて慄え、読み句切毎には、ほほと云う笑顔を立てるのであった。

身を揺り顔をさっと輝やかせ、およそこのひとつに集中した心のたのしさが、二十七歳の小谷さんという女性を包みとらえて了って、笑声をまじえて読む朗誦は、ますます調子よく続けられて行くのであった。

聴いている母子の私たちも、さすがに最初の時からこの小谷さんの変化に気づかずにはいなかった。どうかすると亡児も私も肝腎の聖書の言葉よりも、小谷さんが唇を舌の先で濡らす仕ぐさや、瞳をひきよせた眼つきや、足ずりする身ぶりなどに気をとられていた。