Japanische Klassiker mit Furigana
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まど
鷹野つぎ――人と文学
鷹野 つぎ
Lesen Sie 鷹野つぎ――人と文学 (まど) von 鷹野 つぎ (たかのつぎ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.840 Zeichen · 43 Bildschirme
病苦にもそれを忘却に包むひと時がなかったが、最も険悪な昏睡にしかのがれ道はまずなかった。
そういう夜々も送って来たあとで、安眠のあとの朝ほど私にありがたく思われる時もなかった。指折り数えて七時間も眠ったとすれば、円滑な生命の回転がそれだけ蔽れて潜み、健康な知覚に眠覚ましてくれるのであった。生とも死とも別な安らかな眠りの境いのえられたことは、病者にとってはたとえば地震におしつぶされる瞬間にも飛び起きられる力の蓄積に相当するものであった。
夜八時の消灯から素直に眠りにはいられた翌朝は、ぽかりと夜明けに眼が覚めた。まだ地上は闇で、空だけが銀の薄光を放っていた。開放した窓からは洗うような大気が私の顔の辺に吹き通い、殊に晩秋の晨のひそやかな暁の気は、私の追い詰められたこの最後の生涯にほかならぬ、ひとつのベッドに沁み渡った。
南に面をむけて瞳をあげると、東方に寄った空がまず透明な淡い白光を現わし、水色を帯び、ややしてあわい青緑色に澄み光って来る。その黎明は、緩やかに移ろい、やがて緋のうす色が射しはじめる。棚びく雲があれば雲のふちを色どり、金粉をはじく金色の征矢を放ち、東天は俄かに青緑の空と、くれないの旭光とで絢爛を現出するのであった。