Japanische Klassiker mit Furigana
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むぎのめ
麦の芽
徳永 直
Lesen Sie 麦の芽 (むぎのめ) von 徳永 直 (とくながすなお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.532 Zeichen · 10 Bildschirme
「こらァ、豪気だぞい」
善ニョムさんは、充分に肥料のきいた麦の芽を見て満足だった。腰から煙草入れをとり出すと一服点けて吸いこんだが、こんどは激しく噎せて咳き入りながら、それでも涙の出る眼をこすりながら呟いた。
「なァ、いまもっといい肥料をやるぞい――」
やがて善ニョムさんは、ソロソロ立ち上ると、肥笊に肥料を分けて、畑の隅から、麦の芽の一株ずつに、撒きはじめた。
「ナァ、ホイキタホイ、ことしゃあ豊年、三つ蔵たてて、ホイキタホイ……」
一握り二株半――おかみの暦は変っても、肥料の加減は、善ニョムさんの子供のときから変らない――
「ドッコイショーと」
二タうね撒いて、腰を延ばした善ニョムさんは、首をグッと反らして、青い天を仰いでからユックリもとの位置へ首を直した。
「おや、また普請したぞい……」
フト目に入った山荘庵の丘の上に、赤い瓦の屋根が見えた。
「また俺らの上納米で建てたんだろべい」
四
そう呟いて善ニョムさんはまた向き直って、肥料を移した手笊を抱えて、調子よく、ヒョイヒョイと掴んで撒きながら、
「金の大黒すえてやろ、ホイキタホイ」
麦の芽は、新しく撒かれる肥料の下で、首を振り、顔を覗かして、生き生きと躍った。