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Japanische Klassiker mit Furigana

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さとう

麻布襍記 ――附・自選荷風百句

永井 荷風

Lesen Sie 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.256 Zeichen · 77 Bildschirme

Aozora Bunko

同じ楓の葉にしても、わたしは其の色と其の形とによって、直様これは旧宅の庭のどの辺に立っている樹の葉であるかを弁別し、つづいて雨を聴き月を賞した折の情と景とを回想した。

築地に在る事一年半ばかり、更に今住む麻布の家に移ってからも、曝書の折々、わたしは日頃繙く事を忘れていた書冊の間から旧廬の落葉を発見して、覚えず愁然とする事がある。わたしが常に大久保の旧廬を思うて止まない所以はわが青春のあらゆる記憶のここに宿るが為である。父母の恩を思うにつけてわが不孝の罪を悔ゆるが為である。声色の楽に飽き芸術のまどはしから覚めたる中年の感慨ほど苦しきものはない。蔵書の間にまぎれ込んだ旧廬の落葉は今のわが身には寧ろ古書よりもなつかしいものとなった。

わたしが落葉に対して初めてただならぬ感激を催したのは二十四の時亜米利加へ行った時である。初めてヴェルレエヌが詩を読んだのも丁度此時分であった。当年の記事は亦凡て旧著の中に収められてある。渡航の以前にあっては落葉に対する感興の記憶は一つもない。所謂世紀末の憂悶に触れべき年齢に達していなかった為めであろう。

わたしは今住んでいる麻布の地を愛している。