Japanische Klassiker mit Furigana
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さとう
麻布襍記 ――附・自選荷風百句
永井 荷風
Lesen Sie 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.256 Zeichen · 77 Bildschirme
荘子既に塗抹詩書の嘆をなせり。
利のある処必ず害あり楽しみの生ずる処悲しみなくんばあらず。予め害を除くの道を知らずんばいかでか真の利を得んや。悲しみに堪うるの力ありて始めてよく楽しむを得べし。景気に浮かされて儲ける事ばかり考えれば忽ちガラを食った相場師の如くなるべし。タダで安いと楽しめば三月目にはどうしたものかと途法に暮れるべし。栄華に安んじて其の治むる道を講ぜざれば事皆東京市の道路の如くならん。余既に病み夙に老ゆ。自ら悲しみに堪うる事能わざるを知って亦深く歓びを索めず。庭に花なきも厠の窓より隣家に此を眺めてよろこび家に妻なきも丸抱の安玉を買って遂に孤独を嘆ぜず。分を守って安んずるものを賢者となさば余や自ら許して賢なりとすも亦誰をか憚らんや。
○
本年初夏の頃より老眼鏡を用う。書肆春陽堂三年前より余が旧作を改版するに世俗ポイント活字と称する細字を以てす。ポイント活字の振仮名を校正する事甚しく視力を費すが故に余初は辻易者の如く大なる虫眼鏡を用いき。今春流行感冒に罹り臥床に在る事六十余日読書暁に及ぶ事屡なり。やがて病癒え再び坐して机に向うに燈火俄に暗きを覚ゆ。