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Japanische Klassiker mit Furigana

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さとう

麻布襍記 ――附・自選荷風百句

永井 荷風

Lesen Sie 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.256 Zeichen · 77 Bildschirme

Aozora Bunko

つらつら足駄を眺むるに二枚の歯あり三個の眼ありこれ其の赤裸の本体。鼻緒爪皮の衣裳を得て始めてその態をなす。二つ揃って離れざる事鴛鴦の如しといえども陰陽の性別なく片方ばかしにては用をなさぬ事足袋にひとしきも更に右と左を分たず。

編笠一つで追出されるは生臭坊主の身の果にして、爪皮剥れて捨てらるるは足駄の身の末。アゴというものかけて入歯も叶わぬ身となればさんだらぼっちや西瓜の皮と共に溝川の夕を流れ流れて行衛を知らず。切れた鼻緒の縁もなくなれば三つの目穴どことなく間が抜けて誰やらが鼻下長の面影ありと云いしもおかし。ライオン歯磨の桐箱も今は錫のパイプとなるからに親指の跡凹みし古下駄の化身、そも何となるべき。

○

西洋の女にワキガの臭気あり日本の女に鬢付油の臭気あり。初めて西洋に行くものは地下鉄道車内の臭気に往々嘔吐を催す。日本にあっては霖雨の時節閉切った電車の中屡鼻を掩う事あり。西洋人の口は玉葱臭く日本人の口は沢庵臭し。善良なる家庭は襁褓くさく不良なる家庭は乾魚臭し。雲脂くさきは書生部屋にして安煙草の脂臭きは区役所と警察署なり。

山の手の賤妓は揮発油の匂を漲してお座敷に来り、カッフェーの女給仕は競馬石鹸の匂芬々として新粧を凝し千束町の白首は更にアルボース石鹸の臭気をいとわず。