Japanische Klassiker mit Furigana
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てらだとらひこ
黄道
和辻 哲郎
Lesen Sie 黄道 (てらだとらひこ) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.971 Zeichen · 59 Bildschirme
日がくれると急製の天幕のなかへ女子供を入れて、その外に木刀を持って張り番をした。
月がまだのぼらず、火事の火であたりがほのかに見えるころであった。家の側を空地の方へバタバタとかけ込んで来るものがある。見ると青山に住んでいる妻の妹である。今月が臨月であるというのに三つになる女児を背負ってハアハア息を切らせている。それを見て自分はぎょっとした。燃えて来たのかと聞くと、そうではないが放火で物騒だし今にも燃えて来そうなのだという。車や自動車はとうてい手にはいらない、子供はおびえて他の人におぶさろうとせぬ、仕方なしに自分でおぶって来たのである。送って来た若い者は通りまで荷物を取りに引っ返した。自分たちは危険がいよいよ近寄って来たことを感じて急に興奮した。そこへ二人の若者が、棒で一つの行李を担って、慌しく空地へかけ込みながら「火を消して、火を消して」とただならぬ声で叫んだ。それを先ほどの若者と気づかなかった我々は、何かしら変事の起こったことを感じた。もうすぐそこにつけ火や人殺しが迫って来たのだと思った。この瞬間が自分にとってはあの流言から受けたさまざまの印象の内の最も恐ろしいものであった。