Japanische Klassiker mit Furigana
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くろいろばとしろいやぎ
黒い驢馬と白い山羊
宮本 百合子
Lesen Sie 黒い驢馬と白い山羊 (くろいろばとしろいやぎ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.661 Zeichen · 4 Bildschirme
そこを抜け、まだ遠く歩かねばならないのであった。
巡査と共に立ち止った人中に、一人の漁師が居た。
「俺がぐるりと廻って連れてってやるべ」
漁師の後から歩み出し、トンネルに入った。始め人家の灯で、黒白縞のドガのような漁師の着物の脊中が見えたかと思うと忽ち闇に吸い込まれた。彼は跣で跫音はせず、令子の下駄だけがトンネルの中で反響を起した。やがて、出口からの光でぼんやり漁師の頭の輪廓が見えるようになった。
開いたところへ出ると、令子は飢えたように空を仰いだが、月は雲の裏にあった。薄明りが、草原と、令子と漁師の歩いている路を照して居る。又トンネルがあった。短いトンネルであった。虫の鳴く音や、自分の下駄の音が、一つトンネルを抜ける毎に、新しく令子の耳についた。
又長いトンネルがあり、つづいて雨よけのさしかけのようなトンネルがあり、つき当りにやっと、鵜原館と電燈で照し出した白い板が見えた。
濤の音がした。
宿のものは、この時刻に来る客があると思って居なかったらしく、案内をした漁師に言葉もかけなかった。令子は変通自在な銀の小さい月を漁師の掌の上に落した。
松の梢と日除けがあって、月は令子の部屋へさし込まなかった。