Japanische Klassiker mit Furigana
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くろねこ
黒猫
島木 健作
Lesen Sie 黒猫 (くろねこ) von 島木 健作 (しまきけんさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.717 Zeichen · 14 Bildschirme
この二三年来、家のまわりをうろうろする犬や猫が目立ってふえて来た。人間の食糧事情が及ぼした影響の一つであることはいうまでもない。生れながらの宿なしもあるが、最近まで主人持ちであったというものも多い。彼等は実にひどく尾羽うち枯らしている。曾つて主人持ちであったものがことにひどい。犬と猫とでは犬の方がひどい。要するに人間に諂って暮らすことに慣れて来たものほど落ちぶれ方がみじめなのである。彼等はゴミためを漁りにやって来るが、もはやそのゴミためというものさえも人間の家にはないのである。それでも彼等は毎日根気よくやって来ては庭先や台所口をうろうろする。生垣の隅は幾らふさいでも必ずいつのまにか穴になる。百度狙ううちには一度ぐらいは台所のものを銜え込むことができると思っているのだろう。それに彼等は秋の日の日向ぼっこということもあるらしい。彼等を一番憎んでいるのは母であった。庭の畑作りは母の為事であり、彼等は畑を踏み荒すからである。
私はその頃一日に十五分ぐらいは庭に出られるようになっていた。私も庭に出て彼等を見ることは嫌いだった。私はわけても犬を好かない。主人持ちでいた時には、その家の前を通ったというだけで吠えついたこともある奴が、今はさも馴れ馴れしげに尾など振って近づいてくる。