Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ねずみとはとむぎ

鼠と鳩麦

宮本 百合子

Lesen Sie 鼠と鳩麦 (ねずみとはとむぎ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.253 Zeichen · 5 Bildschirme

Aozora Bunko

「蝋燭! 蝋燭!」

私は、せっかちな声を出して、その小さい灯かげを戸棚の奥へさしいれて見て、

「どう? 一寸! これ!」

灯をその位置にかざしたまま体をひらいて友達に戸棚の中をのぞかせた。鼠は鳩麦の袋を破ってそれを喰べていたのであったが、私たちの驚き且つ感歎したのはそのたべようの巧緻さである。鳩麦の、瀟洒な色の、つるりと堅い細長いこまかな殼の胴なかを噛みやぶってみだけ綺麗にたべている。鳩麦の夥しい殼は空の小舟のような軽い粒々をあたり一面に散ってカサコソと鳴るのである。

鼠がものを齧る音は聴くのはいやだ。ずっと先、上落合の方の家にたった一人で暮していたときは、鼠のあばれようがひどくて、天井の上で何か齧っている物音が、無人さに対して動物の悪意を示してさえいるようで、猛々しかった。一々その鼠を追っぱらっていられない。その強情でしつこい歯の音の下で長い夜の間、私は物を書いていた。そして、くたびれて眠ると、夜中に枕元でその鼠か別の鼠かがあばれて、一度は顔の上をとびこされて、暗闇に愕然と目をあけたことがあった。

いま鳩麦をかじった鼠にも、格別の好意はないのだけれども、その齧りかたが一定の方法をもっていて、しかも何百粒か数え切れない粒を、その方法でかじりつづけて行ったところに一種の気持よさを感じた。