Japanische Klassiker mit Furigana
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はなのひょうげん
鼻の表現
夢野 久作
Lesen Sie 鼻の表現 (はなのひょうげん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.303 Zeichen · 141 Bildschirme
「おれを引き渡すなら引渡せ。そうなりゃあ貴様も地獄の道連だぞ」
と度胸をきめた鼻の表現の物凄さは、大抵の向う見ずでも震え上らせずにはおきませぬ。
「思いもかけぬ御尋ね。何と申開きを致してよいやら。露おぼえの無い事……」
とひれ伏した鼻の表現の神妙さ。一通りのお役人なら一杯喰わされるにきまっております。
彼等の偉大なものになると、泰平の世に何十万石の知行とか何万両の財産とかを手に入れるため、十数年もしくは数十年の間忠実無二の性格を鼻の頭に輝かしつつ明かし暮らす事が出来るのであります。明日こそ毒殺してくれようという当の相手の主人の前に出て、「恐悦至極」の表現を鼻の頭に捧げ奉る事が出来るのであります。
本心を殺して時節を見る事を知らずに正面から諫言をする一刻者の鼻の表現のうちに当然含まれている良心の輝き、主人に対する怨恨、不平、さかしら振り、そのようなものがいろいろ主人の反感を買うのとうらはらに、悪党たちの柔和な、へり下った鼻の表現が着々として成果を収めて行くのは無理もない事であります。
こうして回を重ねた揚句、事遂に発覚して首の座に坐って、いよいよこれで一代記の読み切りという処まで来ても、彼等悪党は自若として鼻の表現をたじろがせずに一命を終るものすら珍らしくないのであります。