Clásicos japoneses con furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lee ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) de 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 132.905 caracteres · 262 pantallas
六 五竜岳に登る
そして恐怖はむしろ、事後において強まったのである。(日がたち年を重ねて、この恐怖は弱まるどころか、かえって増大するくらい、恐らく私の一生でも、山での最も大きな恐怖かもしれぬ、むろん外にも数々あるが)。思えば老助七などは、こうした谷間に生をうけて、若い時から危険ななりわいばかり営んで来たせいもあるか、一概に「山人」という時、想像するのもむずかしいような、一種の神経質にできている。コメカミのところに、大きな創痕のあるのが、二十二、三の頃杣に入って、伐った巨材に引かれて、もろ共に谷へ落ち込んだ、その時死からわずかに免れた記念であるという。近頃までその傷の中に、小さな石片か何か入っていたそうで、その創のため口角が充分に開かないのが、見るからに痛々しい。この厳しい風物の間に、一縷の生を托するものよ、瘠せて尖った痛ましい山鼠の軽捷!
六 五竜岳に登る
祖母谷温泉の廃屋に一泊してから、今度は大黒鉱山を経て、五竜岳に登った。南越沢には、新たに山腹へ細道が通じて、迂回ではあるが楽な登りだ。そして沢を隔てて、こんもり茂った山毛欅の大樹が、深かぶかと生い埋める餓鬼山の眺めは、この道の最も豊かに清らかな景物であろう。