Clásicos japoneses con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lee おせん de 邦枝 完二 (くにえだかんじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 74.074 caracteres · 148 pantallas
「はッはッは。若旦那、そいつァ御無理でげすよ。おせんは名代の親孝行、薬を買いに行ったといやァ、嘘も隠しもござんすまい。ここで逢ったが百年目と、とっ捕まえて口説こうッたって、そうは問屋でおろしませんや。――この近所の揚弓場の姐さんなら知らねえこと、かりにもお前さん、江戸一番と評判のあるおせんでげすぜ。いくら若旦那の御威勢でも、こればッかりは、そう易々たァいきますまいて」
おせんを首尾よく逃してやった雨の中で、桐油から半分顔を出した松五郎は、徳太郎をからかうようにこういうと、我れとわが鼻の頭を、二三度平手で引ッこすった。
腹立たしさに、なかば泣きたい気持をおさえながら、松五郎を睨みつけた徳太郎の細い眉は、止め度なくぴくぴく動いていた。
「市公」
思いがけない出来事に、茫然としていた小僧の市松が、ぺこりと下げた頭の上で、若旦那の声はきりぎりすのようにふるえた。
「馬鹿野郎」
「へえ」
「なぜおせんを捕まえないんだ」
「お放しなすったのは、若旦那でございます」
「ええうるさい。たとえあたしが放しても、捕まえるのはお前の役目だ。――もうお前なんぞに用はない。今すぐここで暇をやるから、どこへでも行っておしまい」