Clásicos japoneses con furigana
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つばくろ
つばくろ
山本 周五郎
Lee つばくろ de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 21.987 caracteres · 44 pantallas
彼の言葉は会うたびに激しくなるばかりだった。
――もう貴女なしには生きてはゆけない、生きてゆきたくもない、どうか私のところへ来て下さい、紀平さんは身分もよし裕福で、あんな可愛い子供まである、紀平さんにとっては貴女が全部ではない、しかし私には貴女が全部だ、貴女に別れるくらいなら私は死ぬことを選ぶ、私のところへ来て下さい、貴女にはこの気持がわかる筈だ、どうか私をこれ以上不幸にしないで下さい。
おいちには彼を突き放すことができなかった。現在の満ち足りた生活が、彼に対して罪であるかのように思えた。
「あの方がどんなにお可哀そうか、わたくしにはよくわかりますの、わたくしも小さいときから苦労してまいりました、世の中の冷たさ、人々の無情さ、……苦しい辛い日々、云いようのない貧しさ、……おいちはそういうなかで育ちました、あの方を慰さめてあげ、あの方の支えになってあげられる者は、わたくしのほかにはございません、ほかには一人もいないのでございます」
おいちはこう云って、袂をきりきりと噛んで、声をころして泣きいった。高雄は眼をつむっていた。怒りは消えたが、怒りよりも耐え難い悲しさ、絶望といってもよいほどの悲しさが、彼の全身をひたし、呼吸を圧迫した。