Clásicos japoneses con furigana
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もののかげ
ものの影
豊島 与志雄
Lee ものの影 (もののかげ) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 8794 caracteres · 18 pantallas
「私の言葉を信じて下さらなければいけません。あれはまったく、私がしたことです。私自身が手を下したのです。その証拠には、あの死体が横たわっていた、一本松の葦の茂みのほとりに、何ものとも知れない暗い影を私は感ずるし、それが私の上にまで被さってくる。こんなことは、当の本人でなければ分るものではない。ね、そうでしょう。勿論私は、罪悪を感じたり、自責の念を覚えたりはしません。彼奴が悪いのだ。」
「そうだ、先方が悪い。」
「然し、なにか影がさしてくる……。」
「そんなもの、焼き捨てればいい。」
「焼き捨てる……。」
彦一は夢からさめたかのように、ふと苦笑を浮べた。
「紙屑みたいにはいきませんよ。」
「いや、紙屑だって容易じゃない。」
「だから、どうなんです。」
「焼き捨てるのさ。」
彦一はまた腹が立ってきた。いい加減、狂人のなぶり者になってるような感じだ。
彼は黙って立ち上り、挨拶もせずに歩き去った。田中さんは草の中にしゃがみこんだまま、空を仰ぎ見ていた。
翌日の払暁、一本松の葦のほとりに火の手があがった。もとより、その辺に人家はないから火災ではない。然し火先や煙の勢が大きく、ただの焚火とも見えないので、近くの人々が行ってみると、田中さんが葦の茂みを焼いているのだった。