Clásicos japoneses con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lee ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 129.411 caracteres · 263 pantallas
二
そこへ久美子が徳利を持って出てきたものですから、猿沢もにわかに態度をつくろって、それに調子を合わせるような言葉つきになりました。
「僕はアンマだね。まあそういうことだ。ところで君は芸術派なんだろう?」
猿沢の盃にお酌する久美子の小麦色の横顔が、急にまぶしいような気がして、蟹江は黙って眼をぱちぱちさせました。すると猿沢は戸の軋るような声を立てて、意味もなく笑い出しました。その笑い声が、蟹江のかんにさわったのは、勿論のことです。その蟹江の前に、猿沢は右手をにゅっとつき出して、握手を求めるような恰好をしました。
「さあ。これを御縁に、君と友達になることにしよう。いいだろうね、蟹江君」
二
その夜のことを考えると、蟹江はどうもうまくはかられたような、そんな気がしてならないのでした。ちゃんと会話のだんどりをつけ、こちらを充分混乱させ、そしてずばりと図星をさして来た。その老獪なやり口を思うと、蟹江はまったく忌々しい気分になってきます。しかしこれは忌々しがってばかりもいられないことでした。
『あいつも久美子に惚れているらしい』
そのことを思うと、蟹江はいても立っても居られないような気持に、駆り立てられてくるのです。