Clásicos japoneses con furigana
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ふしゅう
俘囚
海野 十三
Lee 俘囚 (ふしゅう) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 14.938 caracteres · 31 pantallas
あたしは、云わでもの言葉を、鏡の中の顔に投げつけた。おお、殺人者! あたしは取返しのつかない事をしてしまったのだ。窓の向うに見える井戸の中に、夫の肉体は崩れてゆくだろう。彼にはもう二度と、この土の上に立ち上る力は無くなってしまったのだ。鉛筆の芯が折れたように、彼の生活はプツリと切断してしまったのだ。彼の研究も、かれの家族も(あたし独りがその家族だった)それから彼の財産も、すべて夫の手を離れてしまった。彼は今日まで、すっかり無駄働きをしたようなものだ。そんなことをさせたのは、一体誰の罪だ。殺したのは、あたしだ。しかし殺させるように導いたのは夫自身だったじゃないか。他の男のところへ嫁いでいれば、人殺しなどをせずに済んだにちがいない。あたしの不運が人殺しをさせたのだ。といって人殺しをしたのは此の手である。この鏡に写っている女である。もう拭っても拭い切れない。あたしの肉体には、夫殺しの文字が大きな痣になっているのに違いない。誰がそれを見付けないでいるものか。じわりじわりと司直の手が、あたしの膚に迫ってくるのが感じられる。
(ああ、こんな厭な気持になるのだったら、夫を殺すのではなかった!)