Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lee 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 160.664 caracteres · 323 pantallas

Aozora Bunko

しかし間もなくその筋が、一所足で蹴散らされ、白粉が四散しているのを見ると、初めて胸を撫で下ろした。

それと同時に不思議にも思った。

「いったい誰の所業だろう?」

首を傾げざるを得なかった。

「この白粉の重大な意味は、俺と北山先生とだけしか知っている者はない筈だ。俺は蹴散らした覚えはない。では北山先生が、今夜ここへやって来て、蹴散らしたのではあるまいか。……おっ、そう云えば鶯谷で、知ったような人と擦れ違ったが、そうだそうだ北山先生だ」

ようやく葉之助は思い中った。

「危険が去ったとは云われない。今夜はここで夜明かしをしよう」

葉之助は決心した。

体が綿のように疲労れていた。彼は草の上へ横になった。引き込まれるように眠くなった。

「眠ってはいけない、眠ってはいけない」

こう思いながらもウトウトと、眠りに入ってしまいそうであった。

夜風が空を渡っていた。木立に中って習々と鳴った。それが彼には子守唄に聞こえた。

彼はとうとう眠ってしまった。

鶯谷の暗闇で、葉之助と擦れ違った人物は、谷中の方へ走って行った。

芝の方にあたって火の手が見えた。

「や、これは大きな火事だ」