Clásicos japoneses con furigana
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いちょう
公孫樹
豊島 与志雄
Lee 公孫樹 (いちょう) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 9764 caracteres · 20 pantallas
然し、隣家の火はひらひらと蛇のように這ってるだけで、火の粉も飛んでこなければ、熱くもなかった。それに隣家との間には、可なりの空間と公孫樹の茂みとが狭っていて、その厚ぼったい葉の無数に重なり合ってるのが、綺麗に浮出して見えていた。
「お前は荷造りの手伝をして来い。まだ荷物を出しちゃいけないぞ。」
父にそう云われて、僕はまた家の中に駆け込んだ。家の中はごった返していた。大事な物も何も見分けがつかなかった。僕は皆と一緒に手当次第のものを持って、あちこち駆け廻った。
長い間のようでもあれば、短い間のようでもあった。すさまじい物音がしたので、皆あっと息をつめた。そこへ父がやって来た。
「家は大丈夫、騒がないでいい。」
それでも僕は気になって、台所の方へ飛んで行った。外に出てみると、隣家が半ば焼け落ちたところだった。濛々と渦巻く火の焔が立って、一丈ばかり上から先は、真黒な中に無数の火の粉となっていた。それがみな家と反対の向う側になびいていた。ぱらぱらと雨の降るような気配に気がつくと、あたり一面に水だった。蒸汽ポンプが来て、隣家は四方から水を浴びていた。その余沫が頻に飛んで来るのを覚えると同時に、顔一杯に火のほてりを感じた。