Clásicos japoneses con furigana
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ぜんさいのかいい
前妻の怪異
田中 貢太郎
Lee 前妻の怪異 (ぜんさいのかいい) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 1748 caracteres · 4 pantallas
後妻はまた夫を促して、児を伴れ、毎月必ず前妻の墓へ往った。そのうちに前妻の三周忌が近くなった。その時、児は夜半に便所へ起きる癖がついていた。その夜も児が例によって起きたので、後妻は児を抱いて便所へ入った。そして、児に用をたさしながら、見るともなしに正面の煤けた壁を見た。壁の上部に何かしら物があるような気がするので、その眼を上へ走らせた。そこに恐ろしい顔をした女がいて、今にも何かを掴み取ろうとするようにして両手をかまえ、凄い涙を浮べた眼で此方を見ていた。後妻は、
「きゃっ」
と叫んだ。青年は後妻のただならぬ声を聞いて眼を覚した。そこへ後妻が飛びこんで来て青年に縋りついた。児は放りだされて声をあげて泣いた。
青年はばかばかしいと思ったが、後妻の恐怖があまりひどいので便所へ往った。そして、マッチをすって天井の隅まで覗いたが何もなかった。青年は後妻の迷信を笑ったが、後妻は承知しなかった。翌晩になってまた児が便所に起きたので、後妻は睡がる夫を無理に起して児を抱かし己は後から随いて往った。
青年はしかたなしに便所へ入って児に用をたさせながら正面の壁の上を見た。