Clásicos japoneses con furigana
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クルスかんのん
十字架観音
野村 胡堂
Lee 十字架観音 (クルスかんのん) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 13.655 caracteres · 27 pantallas
た。
余吾之介はぞっとして身を翻しました。小さい時、山形で見た覗きからくりの血だらけな殺し場を思い出したのです。一人の武士が、血達磨になって幾人も幾人も生きた人間を斬る絵は、小さい余吾之介をどんなに脅かしたでしょう。武士の子という誇はあったにしても、幾日も幾月もの間、小さい余吾之介は、その物凄じい幻に悩まされて、内証で顫えていたことを思い出したのです。
余吾之介は滑るように桜の梢から降りると、幸い岸に繋ぎ捨てた船の中へ潜りこみ、朝の往来の始まる前に、血汐を洗い落して身仕舞いをしました。
日の暮れるまで船の中に身を潜めて、番場町へ帰ったのは夜、余吾之介は血潮を浄めて、もう一度、鹿の子の浄らかな祈りの前に立とうとしたのでした。
が、鹿の子の姿は浪宅には見えません。
近所の衆がそっと、
「鹿の子さんは切支丹宗門に帰依した疑いがあるとやらで、縛られて行きましたよ」こう教えてくれたのです。
「えっ」
空しく冷たい自分の家の中を覗いて、余吾之介はどんなに驚いたことでしょう。
「明日は札の辻でエロニモ師やガルベスフランセスコ師や、ヨハネ原主水様や、シモン遠藤様と一緒に磔柱にかけられて、火焙りにされるそうですよ」