Clásicos japoneses con furigana
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
Lee 原民喜戦後全小説 (はるかなたび) de 原 民喜 (はらたみき) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 60.577 caracteres · 124 pantallas
勘
こころ
勘
「勘がないのですか、打てば響くというようになって下さい」と、病妻はよく私のことを零した。こまごました看病と体を使う雑用のため、頭は茫として、私の勘はだんだん鈍って行った。が、妻の方は反対に病気が進んでゆくに随って、直覚力が冴えて行った。あの病気につきものの、極微なものをしつこく穿鑿しようとする癖や、遠方にいる人の気持まで透視しようとする望みが、死期の近づくとともに募って行ったのである。そうして、大概の場合、妻の予言は的中していた。
箪笥や、押入の中にある品物の数量と位置をちゃんと記憶しているのも、街の路筋や、どこの店には何があり、どこそこの家の隣りは誰が棲んでいるかということなど、或は過去の忘れはてた瑣事をふと記憶の底から呼び起すのも、寝た儘動けない病人の方であった。それ故、私は妻を喪ったことに依って、何か大きな空隙ができてしまった。
こころ
わたしが詩を書いて病院に持って行くと、妻はベットで顔の上にそれをひらいて読み、読んでからよくこう云ったものだ「わたしの気持とそっくりではないのかしら、これは……」そうして、妻は不思議そうな顔をした。その顔が私には不思議でならなかった。