Clásicos japoneses con furigana
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
Lee 原民喜戦後全小説 (はるかなたび) de 原 民喜 (はらたみき) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 60.577 caracteres · 124 pantallas
そして、今、彼の方を見れば、相手は牛のように部屋の隅で仮睡しているのだった。
☆その人に久振りに遇った私は、すぐ暇を乞うつもりでいたところ、その人はじつに私をうまうまと把えてしまったのである。日は暮れ灯火管制の街は暗く、帰りを急ぐ心は頻りなのに、「まあもう一寸」とその人はゆるやかなオーバーを着込んだまま娯しそうな顔をしているのである。電車やバスに揺られて、混み合う中だから、話もとぎれとぎれしか出来ないのに、そうして、広い会場に連れて行かれると、ここではなおさら人が騒いでいて話も碌に出来ないのに、その人はどの人とも巧みに二こと三こと冗談を云い合ったり、私が置てけぼりになりそうなのをちゃんと心得ていて一寸側に戻って来たりする。そして、だらだらと粘強いこの人の親和的な弁舌を聞いていると、私は例の曲者を私のうちに意識する。一体この人のどこからああ果てしない糸のあやは流れ出、その綾に私はつつまれているのだろうか。随分昔からの交際ではあるが、今更ふしぎになってもくるのだ。「もう遅いから失礼しますよ」と電車の中で私が時計を取出すと、「なあにまだ早いさ」と云って、その人も懐中時計を出したが、その時計は停っていた。