Clásicos japoneses con furigana
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ふるいど
古井戸
豊島 与志雄
Lee 古井戸 (ふるいど) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 21.433 caracteres · 43 pantallas
庭の植込の影から、松木は陰欝な顔付でやって来た。朝早くから何処へともなく出かけて行き、夜分になって帰って来て、訳の分らない書類と睥めっこをしてる、いつもの通りの顔付だった。
「今日はお出かけじゃないんですか。」
「ええ。」
ぶっきら棒な返事だけで、縁側に来て腰をかけた。
「何でしょう、あの向うの穴は。」
「さあー、土竜か何か……。」
事もなげに答えて、彼の顔をじろりと見た。が暫くすると、ふいに口を開いた。
「あの分だと、上の石がめり込んでしまうかも知れません。」
「いい石ですね。」
「何に使ったものですか……惜しい石ですよ。あれくらい大きな、自然に円みのある石は、なかなか安かありません。惜しいものです。」
そしてまた彼の顔をじろりと見た。その眼付が、いつぞや、格安の売物だが知人に買手はないだろうかと、住宅の図面を二三枚彼に見せた時のそれと、同じように底光りがしていた。
「じゃあ、わきにどけたらどうでしょう。」
彼もちらと松木の顔を見返した。
「二人で動かせますかね。」
「大丈夫です、あれくらいの石なら……。」
石が問題じゃない、後が見物だ、と思って、彼は勢よく跣足で飛び下りた。