Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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なつのそうれつ

夏の葬列

山川 方夫

Lee 夏の葬列 (なつのそうれつ) de 山川 方夫 (やまかわまさお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 60.161 caracteres · 122 pantallas

Aozora Bunko

……もし私、海に飛びこんだら、弘と一つになれるかしら?

「そろそろホテルに帰らないか」

男の手が肩を抑えている。その目が危険なものを見るように横から顔をのぞき、こわばった頬が無理に笑う。

ばかね。私が飛びこむと思ってるのね。

「大丈夫よ。はなして」と、女はいった。「死ぬのなら、私、もうとっくに死んでいるわ」

「日が翳ってきた」と男はいった。「寒くなってきたぜ」

自分に、海のほかなにもなくなってしまっていたたったいまの記憶が、だが、女の中でまた顔を上げる。女は男の顔をみつめる。

「でも、ここより海はもっと暗いのよ。冷たいのよ。そして海の中は、これからだんだん寒くなるのよ。冬になるのよ」

「なに?」

一瞬、こわい目をし、それから男は醜くひきつったように笑う。

「わかった。だけど、もう、そんな子供みたいなことはいうなよ」

「いうわ、私」

「いうな」はじめて、男は叫ぶ。

「……どうしていけないのよ」

声が風に吹き飛ぶ。だから私も叫ぶ声になるのだ。

「なにもいわなければいいの? いわなければ、どうして幸福になれるの?」

「ぼくのことも考えろ。ぼくだって悲しいんだ」

男は、女の肩を抱いた。