Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ゆうもやのなか

夕靄の中

山本 周五郎

Lee 夕靄の中 (ゆうもやのなか) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 9522 caracteres · 19 pantallas

Aozora Bunko

「あの失礼でございますが」脇から老女がおそるおそる云った、「貴方は町方の親分さまでございますか、もしもそうなら、これはとんでもないお間違いでございます」

男は悠くりと振返った。老女は微笑して、気の毒そうに頷きながら云った。

「こちらは駿河町の越後屋のお手代で、繁二郎と仰しゃる方です、わたくしは山崎町の藤兵衛店にいる、おかねという者ですが、この方は、死んだわたくしの娘の墓まいりに来て下すったところなんです」

「するとおまえさんは、この男を知っているのかえ」

「存じておりますとも、よけいなことを申上げるようですが、この方と死んだ娘のおいねとは夫婦約束ができていたのですから」

「だが、墓まいりに短刀はおかしかあないか」

「それは」と老女が口ごもった、「――この方のようすでお察し申すのですけれど、おいねに死なれて、思いつめたあまり、……」

その男は彼のほうを見た。彼は眼を伏せたまま、そっと頷いた。男はそれを細い眼で眺めながら、穏やかな口ぶりで云った。

「この人の云うことに相違ないか、おまえ本当に堅気の、越後屋の手代か」

彼はまた頷いた。

「そうか、おれの眼ちがいか」

その男は初めて、掴んでいた腕を放した。