Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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しょうせつ えんちょう

小説 圓朝

正岡 容

Lee 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) de 正岡 容 (まさおかいるる) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 163.270 caracteres · 325 pantallas

Aozora Bunko

……さすがに、この世界はおもしろかった、次郎吉にも。

お寺はもちろん、いままでの石屋や八百屋や両替屋や魚屋と比べては罰が当るとおもうくらい、愉しくもあれば生甲斐も感じられた。

舌であらわすことと筆もて描くことと、そこに違いはあるとしても、「芸」の玄妙不可思議な醍醐味に変りはなかった。もし自分のめざして止まない落語家の世界を品川の海としても、これはたしかにすみだ川を抜手を切って泳いでゆくくらいの愉しさはあった。「自分」という魚はここにおいて初めておおどかに心置きなく呼吸というものを許されたのだった。まず黄いろと藍とを溶け合わしたときほととぎす啼く青葉若葉の光りのいろの、たちまちそこにあらわれきたる面白さ。次いで赤と藍とを混ぜ合わしたとき、由縁も江戸の助六が大鉢巻の紫をそのままそこに、髣髴たらしめ得るありがたさ。まった、ほんものの黄金の絵の具をつかったより黄いろと茶いろをかきまぜて塗ったときのほう、かえって黄金以上の黄金いろたり得ると知ったことも、次郎吉にとってはまこと愉しき一大発見だった。

かくて始めて知った「色」というものの、蠱惑よ、秘密よ、不可思議よ――虹の世界へ島流しに遭った童子のように次郎吉は、日夜をひたすらに瞠目し、感嘆し、驚喜していた。