Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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びせいのしん

尾生の信

芥川 竜之介

Lee 尾生の信 (びせいのしん) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 1662 caracteres · 4 pantallas

Aozora Bunko

が、女は未だに来ない。

尾生は水の中に立ったまま、まだ一縷の望を便りに、何度も橋の空へ眼をやった。

腹を浸した水の上には、とうに蒼茫たる暮色が立ち罩めて、遠近に茂った蘆や柳も、寂しい葉ずれの音ばかりを、ぼんやりした靄の中から送って来る。と、尾生の鼻を掠めて、鱸らしい魚が一匹、ひらりと白い腹を飜した。その魚の躍った空にも、疎ながらもう星の光が見えて、蔦蘿のからんだ橋欄の形さえ、いち早い宵暗の中に紛れている。が、女は未だに来ない。……

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夜半、月の光が一川の蘆と柳とに溢れた時、川の水と微風とは静に囁き交しながら、橋の下の尾生の死骸を、やさしく海の方へ運んで行った。が、尾生の魂は、寂しい天心の月の光に、思い憧れたせいかも知れない。ひそかに死骸を抜け出すと、ほのかに明るんだ空の向うへ、まるで水のや藻の※(「均のつくり」、第3水準1-14-75)が音もなく川から立ち昇るように、うらうらと高く昇ってしまった。……

それから幾千年かを隔てた後、この魂は無数の流転を閲して、また生を人間に託さなければならなくなった。