Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

ja-reading.com

Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.

かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

Lee 影男 (かげおとこ) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 154.133 caracteres · 310 pantallas

Aozora Bunko

それがもう、目を圧するばかりに、ふたりの犯罪者の頭上に迫っているのだ。

そのとき、どこからともなく、かすかに異様な音楽が聞こえてきた。こずえを吹く風の音のようでもあった。谷川のせせらぎのようでもあった。肉声とも、管楽とも、弦楽とも聞き分けられなかった。そのどれかのようでもあり、全部のようでもあった。悠久なるふるさとを恋うる音色であった。それには、神と、死と、恋との音調がまじっていた。

それと同時に、谷底のふたりのそばの岩のすきまから、ほのかに青い煙が漂いだしていた。立ち上らない煙であった。重く地底をはう煙であった。うずくまっているふたりの腰にたゆたい、胸にただよい、ついに顔をおおいはじめた。不思議に甘いにおいがあった。かれらはその煙に酩酊を感じた。

いつのまにか、天女の雲は頭上五メートルに迫っていた。眼界いっぱいに広がる巨大なる桃色の雲となっていた。肉体の雲は、裸女のあらゆる陰影を刻んで、ふくれ、くぼみ、もつれ、からまって、うごめきうごめき下降しつづけた。

その不思議な美しさは、何ものにも比べることができなかった。瞠目すべき悪夢の中の妖異であった。