Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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あいのごとく

愛のごとく

山川 方夫

Lee 愛のごとく (あいのごとく) de 山川 方夫 (やまかわまさお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 103.908 caracteres · 210 pantallas

Aozora Bunko

安達はだが、いつもと同じ狡そうな笑顔をうかべていた。「坊や、これからはおれのこと、ダーチーって呼びなよ、友だちのダーチー」と彼はいった。

「でも、僕はプロになるつもりはない」

「いいじゃねえか、ただ好きでおれが教える。坊やがおぼえる、それだけの話だ」

それだけの話だ、と信二も思った。安達の過去を聞くのは余計なことにちがいなかった。他人の物語や身の上ばなしはおれに無関係だ。彼にまかせられているのは、彼ひとりなのにすぎなかった。幕を越したざわめきが高くなった。開幕は間近だった。

「めずらしいな、あの黒の女が今日はもう来てるぞ」とステージに登ってきた荻村がいった。

「ああ、おれもみたぞ、いつものアメちゃんとまたいっしょだ」安達がいった。

「あいつは、いつも同じ相手なんだな」

「黒いスーツの女? いつもラストまでいる」と信二は荻村に声をかけた。

「そう、あの美人さ」荻村は答え、ピアノの蓋をひらいた。だれも、それ以上「黒の女」についていうものはなかった。そして、それが信二にとり、人びとが彼の目の前で彼女について交わした言葉の最初であり、最後だった。

信二は、弾かれたように肩を硬くしていた。