Clásicos japoneses con furigana
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げさくざんまい
戯作三昧
Lee 戯作三昧 (げさくざんまい) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 20.807 caracteres · 42 pantallas
彼はさらにその前を読んだ。そうしてまたその前の前を読んだ。
しかし読むに従って拙劣な布置と乱脈な文章とは、次第に眼の前に展開して来る。そこには何らの映像をも与えない叙景があった。何らの感激をも含まない詠歎があった。そうしてまた、何らの理路をたどらない論弁があった。彼が数日を費やして書き上げた何回分かの原稿は、今の彼の眼から見ると、ことごとく無用の饒舌としか思われない。彼は急に、心を刺されるような苦痛を感じた。
「これは始めから、書き直すよりほかはない。」
彼は心の中でこう叫びながら、いまいましそうに原稿を向うへつきやると、片肘ついてごろりと横になった。が、それでもまだ気になるのか、眼は机の上を離れない。彼はこの机の上で、弓張月を書き、南柯夢を書き、そうして今は八犬伝を書いた。この上にある端渓の硯、蹲の文鎮、蟇の形をした銅の水差し、獅子と牡丹とを浮かせた青磁の硯屏、それから蘭を刻んだ孟宗の根竹の筆立て――そういう一切の文房具は、皆彼の創作の苦しみに、久しい以前から親んでいる。それらの物を見るにつけても、彼はおのずから今の失敗が、彼の一生の労作に、暗い影を投げるような――彼自身の実力が根本的に怪しいような、いまわしい不安を禁じることが出来ない。