Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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こきょう

故郷

豊島 与志雄

Lee 故郷 (こきょう) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 3738 caracteres · 8 pantallas

Aozora Bunko

僕自身でも実は少々意外だったのだ。

「あの頃僕は、云わば精神的に旅に出ていた。従来の種々のものが崩壊して、而も新たな何物も発見出来ない、そういう状態にあった。万事が移りゆくのだ。だから僕自身から云えば、旅に出て始終歩き続けているようなものだった。そして足を留むる場所がどこにあるのやら、自分にも分からなかった。

「然しながら、僕は朗かだった。何物にも繋がれない自分自身を見出したからだ。人が憂欝になるのは、何物かに繋ぎ留られ、その緊縛に圧倒されそうな時にである。宿りのない旅を続けて、何物にも繋がれない場合こそ、本当の自由であって、自由は朗かさの別名に外ならない。過去は後方に薄れてゆき、未来は茫として見透しがつかず、そして晴やかに日が照っているのだ。仕事も、世間的顧慮も、一切を打捨てて、僕はただ朗かに歩き続けた。

「そういう時期が引続いた後、僕はふと、自分の精神の中に異様なものが澱んでいるのを見出した。大空に見入ってる時、大海を見渡してる時、心の中に澱むような何かだ。空虚だとも云えるし、苦悩だとも云えるし、翹望だとも云える。死のようなものだ。そいつを見出した時、僕は駭然とした。