Clásicos japoneses con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lee 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 186.659 caracteres · 372 pantallas
かの女は、さき頃、この曠野を、ひとりで幾日も幾夜も迷いあるいたことを思い出した。そして、その時は、青鷺の三蔵が恃みだったが、いまは、うるさい、やっかい者と、眉をひそめた。
木曾川に出、犬山の渡しを待つあいだ、人々は、川原で休んだ。
かの女の駒に付いていた口取の小者が、馬糧を飼っているあいだを、かの女も、草の穂に戯れながら、そこらを、すこし歩いていた。
「おひい様」
草の中で、声がした。
「三蔵だね」
と、於通は、自分の方から云ってやった。
「――なんです、まるで道中かせぎの悪者みたいに、ひとの後を、見えかくれに、尾けて来たりして」
「だって、おひいさん」
三蔵はおそるおそる草むらから身をのばし、あたりを見ながら寄って来て、
「ほかに、お連れ様が、大勢いるじゃございませんか。ですから、人目をしのんで来たんですよ」
「なぜなの」
「なぜって、ほかの衆に知れちゃあ、おひい様、あんたが、きまりが悪いでしょう」
於通は、何のひびきもない顔して、
「三蔵。どうして、私が、きまりが悪いわけがあるの。……連れの人たちにたいして」
と、問いかえした。
「でも……何でしょう」
そういわれては、三蔵も取りつくすべもなかった。