Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lee 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 180.256 caracteres · 361 pantallas

Aozora Bunko

「おうウいッ」

何者かが、闇でこう呼んでいる。谺のように丘の木立の中でも、

「おういッ……」

と、同じ調子に答えている。

よほど近づいてみないと、ちょっと気づかないが、丘の崖や大樹を繞って、蟹江川の水を引いた濠が、自然の古池のように蒼い水草がいっぱいなのだ。

その水草はまた、古い石垣と、土塀とを抱いて、何百年かの間、ここの主の地位と勢力と子孫とを、守り続けて来たものである。

丘一帯の宅地は、何千坪か、何万坪あるものか、外からはちょっと想像もつかない。勿論、邸の主は、この海東郷蜂須賀村の土豪で、姓名も代々、蜂須賀といい、小六と称している。

ここへ土着した中興の祖は、小六正昭。

今の当主小六正勝。

彦右衛門ともいう。

応永年間に、足利の姓を改めた家系だともいうし、応仁の大乱をうけて、この地方へ土着したのだともいわれているから――その是非はとにかく、何しろ古い家すじであることに間違いはない。

「おうウいッ。開門ッ……」

濠の外で、再び四、五人の人影が呶鳴っている。

何処からか今、立ち帰って来た主の――小六正勝と、その家来。

といっても、小六は今も、またその先代からも、正しい主筋も持っていないし、領土の権も、領政も施いていない――いわゆる一土豪に過ぎないから、その家来といっても、主といっても、どこか粗野な風がある。