Clásicos japoneses con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lee 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 180.256 caracteres · 361 pantallas
「何の!」
と、ばかり追い込むと、信長も負けない気になって、駒の鐙をたたきに叩いた。
卯月は、織田の卯月と、敵国にまで聞えた名馬であり、値にしても、その馬格からしても、五郎左の飼い使っている鹿毛などとは、本来、比較になる馬ではなかった。
けれど鹿毛は若く、鹿毛の乗人はまた、平常、信長のように、主君扱いされて、驕っている者とはちがう。なお、馬に騎る修行も鍛練も、ずっと違う。
五郎左は、前を駈ける信長の卯月をめがけて、遮二無二、迫って行った。
二十間ほども越された距離の差が、十馬身ぐらいにつまり、五馬身となり、一馬身となり、鼻ぐらいな差になって来た。
先人を越すは易く
後人に越されざるは難し
という古語のとおりに、それを越されまいとする信長は、息がきれて来た。
そして、その息を――一息抜くまに、五郎左衛門の駒は、鮮やかに彼を追い越し、ぱっと、砂塵を後に浴びせて、なお、馬場を半廻りも先まで、馬の余勢なりで跳んで行った。
「ちいッ」
と、舌打ちしながら、信長は鞍をすてて、地上へとび降りていた。自分の本質をむき出して、しかも闘い破れた苦しい気持から、その面は、喘いでいる馬よりも、悲痛だった。