Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

Lee 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) de 林 芙美子 (はやしふみこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 247.330 caracteres · 497 pantallas

Aozora Bunko

重たい風が飄々と吹く度に、興奮した私の鼻穴に、すがすがしい秋の果実店からあんなに芳烈な匂いがしてくる。

*

(十月×日)

焼栗の声がなつかしい頃になった。廓を流して行く焼栗屋のにぶい声を聞いていると、妙に淋しくなってしまって、暗い部屋の中に私は一人でじっと窓を見ている。私は小さい時から、冬になりかけるとよく歯が痛んだものだ。まだ母親に甘えている時は、畳にごろごろして泣き叫び、ビタビタと梅干を顔一杯塗って貰っては、しゃっくりをして泣いている私だった。だが、ようやく人生も半ば近くに達し、旅の空の、こうした侘しいカフエーの二階に、歯を病んで寝ていると、じき故郷の野や山や海や、別れた人達の顔を思い出してくる。

水っぽい眼を向けてお話をする神様は、歪んだ窓外の飄々としたあのお月様ばかりだ……。

「まだ痛む?」

そっと上って来たお君さんの大きいひさし髪が、月の光りで、くらく私の上におおいかぶさる。今朝から何も食べない私の鼻穴に、プンと海苔の香をただよわせて、お君さんは枕元に寿司皿を置いた。そして黙って、私の目を見ていた。優しい心づかいだと思う。わけもなく、涙がにじんできて、薄い蒲団の下から財布を出すと、君ちゃんは、「馬鹿ね!」