Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lee 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 576.941 caracteres · 1138 pantallas

Aozora Bunko

一つ辷って足を踏み脱せばどこまで落ちるか分らぬ断層が、ガラスの断面のようなびいどろ色の口を開け、降りて来る二人の足を待っていた。もう草もなく、いつの間にか二人の周囲はまったく氷ばかりの歯となって来ると、矢代は斜面の急な部分を迂廻する心掛けで、現れて来る不規則な氷の群峰を選び進まねばならなかったが、間断なく同じ動作をつづけるこの氷の歯渡りは、石工のような忍耐が必要だと悟って急がぬ用心をするのだった。

「上から見たときは狭かったようだけど、這入って見ると、ほんとに氷河って大きいものね。」

千鶴子はピッケルを打ちつけつつ、上から垂らす矢代のバンドを握って云った。

「冷いかと思ったが、そうでもないなア。これ、こんなに汗ですよ。」

「あたしもよ。写真をそのうちどっかで撮りましようね。」

引き上げられながら登って来る千鶴子を見ながらも、矢代はもう少し自分に力があればと、今は隠せぬ努力の不足に羞恥を感じて歎いた。それも労力だけではなく、智力も同様に貧しい自分について、彼女を引き上げる度びに感じるその操作は、二重の心苦しい瞬間となってときどき矢代の胸を打って来た。これでもし千鶴子と結婚するような機会を持てば――と、ふとそう思う聯想につれても、氷河は自分には天罰を与えた苦手だと彼は苦笑するのだった。