Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lee 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 576.941 caracteres · 1138 pantallas

Aozora Bunko

と矢代は云って眼の前に聳えた白いサクレクールの塔を仰いでみた。

「じゃ、今夜は極楽往生としとくかね。どうもしかし、論争のない世界という奴は面白くないものだな。仕事がなくなったみたいで。いやに仲ばかり良くなるのは、これや、神さま何か間違ってるぞ。」

と久慈は云ってお寺の塔を振り仰いだ。

「このお寺を山の上へ建てるだけで、どんなにパリの人間馬鹿な苦労をしたか知れぬのだからね。毎晩機関銃ぐらいは鳴ろうというものだ。むかしの人の苦労を忘れちゃ罰があたるぞと、お説教しているようなものだ。」

東野はお参りに山へ来たのを思い出したらしく、軽くサクレクールに向ってお辞儀をした。矢代の眼はそのとき一寸光りを帯びた。

「東野さん、あなたもやっぱり、人間の苦労が馬鹿に見えることがありますかね。ときどき僕にもあるんだが。」

「いや、それや、僕が第一、せっせと馬鹿な苦労をしたからだが、しかし、誰か一人が馬鹿なことをすれば、良いことをしているものでも人間は同罪になるらしい。そこが人間の面白さじゃないかな。とにかく、下へもう降りよう。それから今夜は一つ、君らのその自然に還るところを見せてもらいたいものだな。