Clásicos japoneses con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lee 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 149.813 caracteres · 302 pantallas
女の先達は復た私の家へ訪ねて来て、それ見たかと言わぬばかりの口調で、散々家内の不心得を責めた。「度し難い家族」――これが先達の後へ残して行った意味だった。
お菊が生前の遊び友達は、小さな下駄の音をさせて、朝に晩に家の前を通った。家内は窓の格子(こうし)にとりついて、そういう子供の姿を眺める度に、お菊のことを思出していた。
「菊ちゃんが死んじゃったんでは、真実(ほんと)にツマラない」
こう家内は口癖のように嘆息した。
私も、散々仕事で疲れた揚句で、急にお菊が居なくなった家の内に坐って見た時は、暴風にでも浚(さら)われて持って行かれたような気がした。山を下りてから、私には安い思をしたという日も少なかった。私の生命(いのち)は根から動揺(ゆすぶ)られ通しだ。
「ナニ、まだお房が居る」
と私は言って見た。
麻疹(はしか)後、とかくお房は元気が無かった。亡くなった私の母親を思出させるようなこの娘は、髪の毛の濃く多いところまでも似て来た。信州の牧野君からは子守を一人心配してよこしてくれた頃で、いくらか私の家でも沈着(おちつ)き、手も増えた。二人まで子供を失くしたことを考えて、私達はこの残った娘を大切に見なければ成らないと思った。