Clásicos japoneses con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lee 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 149.813 caracteres · 302 pantallas
「あれ、女であの方を褒めない者は御座ません。奥様、貴方も桜井さん贔負じゃ御座ませんか」
奥様は目を細くなさいました。何とも物は仰いませんでしたけれど、御顔を見ているうちに、美しい朱唇が曲んで来て、終に微笑になって了いました。
洋燈の側にうとうとしていた猫が、急に耳を振って、物音に驚いたように馳出したので、奥様も私も殿方の御噂さを休めて聞耳を立てていますと、須叟猫は御部屋へ帰って来て、前脚を延しながら一つ伸をして、撓垂るように奥様の御膝へ乗りました。御子様がないのですから、奥様も恰も懐しそうに抱〆て、白い頬をその柔い毛に摺付て、美しい夢でも眼の前を通るような溶々とした目付をなさいました。
つい側に針箱が有ました。奥様はそれを引寄せて、引出のなかから目も覚めるような美しい半襟を取出して、「こないだから、これをお前に上げよう上げようと思っていたんだよ」
と仰りながら私に掴ませました。夜のことですから、紫縮緬が小豆色に見えました。私は目を円くして、頂いてよいやら、悪いやらで、さんざん御断りもして見たのです。
「あれ、お前のようにお言だと、私が困るじゃないか。