Clásicos japoneses con furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Lee 春いくたび (はるいくたび) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 70.094 caracteres · 142 pantallas
三の二
「大切な約束ってなにさ」
「あとで父さまにきいてちょうだい、あたしはすぐに出かけるわ」
おゆきは若い武士の預けて行った文匣を取って来ると、わけがわからずにぼんやりしている五郎吉を押しやって、
「それからお願いがあるの、あたしのかわりに糸車を廻して、あの手毬唄を唄っていてちょうだい、見張の者にあたしがいると思わせるのよ」
「いいとも。だけどおいら、とてもおゆきさんみたいな声じゃ唄えねえや」
「大丈夫よ、五郎さんの声はあたし以上だわ、頼んでよ!」
そういうともう、おゆきは裏手へとすべるように出て行った。
断崖の岩をえぐって造った桟道である。一歩をあやまっても千仞の谷底へ落ちてしまう。しかし馴れているおゆきは身も軽く、五郎吉の通って来たのを逆になんなく峠路へ出た。……明るい月光は昼のようで、うっかりすると折口の岩にいる見張の者に発見される。おゆきは身を伏せながら、五郎吉の馬のつないであるところまで息もつまる思いでたどりついた。
三の二
おゆきは肩で息をしていた。
湯沢の町はずれにある宿、柏屋の奥のひと間で、いま沖田伊兵衛と向かい合っているのだ。
――伊兵衛は四十あまりの眼の鋭い武士で、言葉訛から察すると薩摩の人らしかった。