Clásicos japoneses con furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Lee 春いくたび (はるいくたび) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 70.094 caracteres · 142 pantallas
「兵馬さま!」小浪は悲しげにさえぎった。
「それはあんまりです、父の不審な死態も、あなたにだけお話し申そうと、きょうまで胸に秘めてきた小浪の気持……そんなふうにおっしゃるのはあんまりです」
「泣くのは勘弁してください。せっかくいい心持に酔った酒が醒めてしまう。うーい、眠くなりましたから失礼、あとでまた金を借りにいくと、帰ったら甲子雄へお言伝てを頼みます、……御免!」
「兵馬さま、それは御本心――」
とすりよったが、兵馬はもう眼を閉じて、軽く鼾さえかき始めている、――小浪は口惜しそうにその寝顔を見ていたが、やがて力なく立って部屋から出ていった。そのまま午過ぎまでぐっすり眠った兵馬、刻外れの食事をすませると、
「おい安の字、一緒に歩びねえ」
「合点だ、先生のお供なら這ってもいきやす」
「意地の汚ねえ声を出すなよ」
と安吉を伴れて外へ出た。
「きょうはどちらのほうへのしやすね」
「もう呑むことを考えていやがる、ちょうど金がなくなったからまず緑町の甲子雄を強請るんだ。あれだけ立派に道場を張っていれば、十両や二十両の冥加金は安いもんだぜ」
「そりゃあ悪いよ先生、おまえ様はとかく松林さんを悪くいうが、あの人はどうして、なかなか物のわかる良い人物ですぜ」