Clásicos japoneses con furigana
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はる
春
岡本 かの子
Lee 春 (はる) de 岡本 かの子 (おかもとかのこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 23.864 caracteres · 48 pantallas
京子が遂々言ってしまった。京子の声は低くて透る。加奈子は、あとを言わせまいとしたが、傍の患者に附き添って居た四十男が聞いてしまった。男は、加奈子の気兼ねを受け取るように愛想よく言った。
――院長さんが、まったく体裁をかまわないんでしてな。その代り此処の博士の診察は確なもんですよ。は、は、は、は。
この元気な附添人とは反対に、固くなって黙りこくって居る患者の若い男は、盲人のように黒くうずくまって居る。
廊下に面した応接間の扉は、開け放してある。廊下を絶えず往来する看護手たちの姿が見える。年齢は大方四十前後位。屈強な男子達で、狂暴な男性狂者の監禁室の看守ででもあるらしい。白い上被も着た人相骨格の嶮岨に見える者ばかりだ。無制限な狂暴患者に対する不断の用心や、間断無しの警戒、そしてあらゆる異端のなかで、時には圧迫的にも洞察的にも彼等の眼は光り続けていなければならないためか、自然底冷く意地悪そうに落ち窪んでしまうのであろう。一人、二人ずつ彼等はときどき応接室へ何かの用事で出入する。それを京子はちらちら視て、如何にもうんざりしたように加奈子の肩へ首を載せ、眼を避らしてしまった。