Clásicos japoneses con furigana
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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
Lee 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 104.300 caracteres · 202 pantallas
こうしてまた昔語りが始まるのだった。
幸太が来ているとき、おせんはなるべく店へ出ないようにした。偶に顔が合うと、幸太はきまって眼で笑いかけた。粗暴な向う気の強い彼には珍しく、おとなしいというよりはなにか乞い求めるような表情だった。あの人はなにか考えているのだろう、お祖父さんがはっきり断わったというのに、まだあたしのことをなんとか思っているのかしら、……おせんは彼のそういう眼つきが不愉快で、いつもすげなく顔をそむけ、さっさと台所のほうへ去って来るのだが、幸太はそれで気を悪くするようすもなく、殆んど三日にあげずやって来ては話しこんでいった。
おせんはその前の年の春から、午まえだけお針の稽古にかよっていた。そこは大通りを越した福井町の裏にあり、お師匠さんはよねという五十あまりの後家で、教えるのは嫁入り前の娘にかぎられていた。おせんは無口でもあり、家も貧しかったから、そこではかくべつ親しくする者もなかった。出入りの挨拶をするほかは世間ばなしにも加わらず、たいてい隅のほうに独りで坐っていた。娘たちもしいて馴染もうとはしなかったが、そのなかで天王町のほうから来るおもんという娘だけは、しきりにおせんに近づきたがった。