Clásicos japoneses con furigana
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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
Lee 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 104.300 caracteres · 202 pantallas
「ええ頂くわ、お祖父さんもそうなさいな」
「なんだか野駆けにでもいったようだな」
源六は独り言のように、そっとこう呟きながら一つ取った。おれも貰うぜと云って、幸太も取って頬張ったが、こいつは大笑いだと頭へ手をやった、「冗談じゃない塩をつけるのを忘れちゃったよ」
「まあそんなものさ」源六が笑いながら云った、「男があんまりですぎるのもげびたものだ」
「いいわよ、梅干を出すから待ってらっしゃい」
おせんは手早く包をひらき、重箱をとりだして蓋をあけた。――ほんとうに野駆けにでもいったようだ、と思いながら……。
火事のことは源六も幸太も口にしなかった、火のようすを見にいった幸太がなにも云わないのは、云わないことがそのまま返辞だからである。それでなくとも、横なぐりに叩きつけて来るような烈風は、すでに濃密な煙とかなり高い熱さを伴っているし、頭上へは時おりこまかい火の粉が舞いはじめて来た。
「爺さんもおせんちゃんも、少し横になるほうがいい、火の粉はおれが払ってやるから」
そうすすめるので、源六とおせんは蒲団をかぶり、包に倚りかかって楽な姿勢をとった。……家は焼けてしまうだろう、おせんはそう思ったが、悲しくも辛くもなかった、お祖父さんが病気で倒れたり、地震があったり、今年はひどく運が悪かった、いっそ家もきれいさっぱり焼けて、どん詰り