Clásicos japoneses con furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lee 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 111.569 caracteres · 222 pantallas
捨吉はこの兄にまで帳場の机の下を睨まれるほど、それほど我を忘れてもいなかった。
いそがしい伊勢崎屋の夜がまたやって来た。ホッと思出したように蘇生るような溜息を吐いて置いて、捨吉は帳場の右からも左からも集って来る店の売代を受取った。その金高と品物の名前とを一々帳面に書きとめた。兄は帳場の周囲を廻りに廻って、遅くまで留っていた。そろそろ皆が店を仕舞いかける頃になっても、まだ残っていた。
一日の売揚の勘定が始まる頃には、真勢さんをはじめ、新どん、吉どんなどの主な若手が、各自算盤を手にして帳場の左右に集った。めずらしく兄もその仲間に入って、手伝い顔に燈火のかげに立った。
読み役の捨吉は自分で記けた帳面をひろげて、競うような算盤の珠の音を聞きながら、その日の分を読み始めた。不慣な彼も、「七」の数を「なな」と発音し、「四」の数を「よん」と撥るぐらいのことは疾くに心得ていた。
「揚げましては――金三十三銭也。七十五銭也。八十銭也。一円と飛んで五銭也。二円也。七銭也。五銭也。四十銭也。六十銭也。五十銭也。五十銭也。同じく五十銭也。猶五十銭也。金一円也……」
「何だ、その読み方は」