Clásicos japoneses con furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lee 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 111.569 caracteres · 222 pantallas
何年も何年も寝床の上にばかり臥たり起きたりした田辺の姉さんが弘の手なぞを引いて歩いている姿をこの河岸に見つけるということは、捨吉にはめずらしかった。お婆さんの言草ではないが、まるで嘘のような気がした。
岸へ上って身体を拭き、面長な教師にも別れ、水泳場を出て弘を探した頃は、姉さん達はもう見えなかった。小父さんが釣に来てよく腰をかける石なぞが捨吉の眼についた。
濡れた手拭を提げて元来た道を田辺の家の前まで引返して行くと、捨吉は門前のところで玉木の小母さんのボンヤリと立っているのに逢った。小母さんは何を眺めるともなく往来を眺めていた。
「捨さん、お前さんはえらい」と小母さんが捨吉の顔を見て言った。
「何故です」と捨吉は問返した。
「何故って、田辺のような家にそう長く辛抱していられるのは、えらい」
この小母さんの返事に、捨吉は侮辱を感じた。
小母さんは悄れて、「もう私共はそんなに長いことここの家の御世話に成っていません」
と附添した。
アーメン嫌いな人達の中で、時々捨吉が二階へ上って行って祈祷の仲間入をするように成ったは、同じ居候の玉木さんを憐むという心からであった。