Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lee 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 145.078 caracteres · 285 pantallas

Aozora Bunko

――ものにするぞ。

彼は唇で微笑しながら思った。今日こそ一ノ関をものにしてみせる、おれはおれの好ましいように生きて来た。自分を抑えたり、がまんしたり、耐え忍んだりしたことはない、欲しいものは即座に手に入れた。欲しいものを手に入れるためには、少しも遠慮しなかったし、手段の当否にも決してこだわらなかった。これがおれの生きかただ、石川のために両眼を失ったが、おれ自身を変えることはできない、おれを乞食にすることはできない、おれのこの頭を下げさせることは誰にもできないぞ、と六郎兵衛は思った。

「おれはおれなりに生きた」彼は駕籠に揺られながら呟いた、「これからもおれの望むように生きてゆく、どこまでもだ」

「なにか仰しゃいましたか」と駕籠の後棒が訊いた。

「芋虫の這うような担ぎかたをするな」と六郎兵衛はどなった、「いそいでやれ」

それからほぼ一刻のち、宇田川橋にある伊達兵部の屋敷で、火事が起こった。

火は兵部邸から出たともいい、隣接した町家から出たともいわれるが、日昏れまえから吹き始めた強い西南の風に煽られ、たちまち延焼して、田村右京邸を焼き、伊達本邸を焼いた。九月はまだ秋で、火事の備えも充分ではなかったし、西南の風が強くなるばかりで、防ぎようがなかったのだろう。